• 2018.02.18 Sunday
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JUGEMテーマ:フライフィッシング

 

解禁直後の吉田川

1月中旬ごろまでは「行かないよ」と思っていた。

解禁直後の長良川水系なんて、極寒な上に人が多くて川に入るのも大変だ。

やっと川に立てたとしてもライズがない、若しくは到底届かない対岸で散発にやって(ライズして)いるなんてこともよくある。

まるで寒行だ。

 

ところが、2月の解禁が近づくとソワソワしてしまう。

これは毎年の恒例で風物詩みないなものなのだが、解禁日に雪がちらつくなんてニュースが入ってくると「釣れるかもしれない」と安易なプラス思考が始まってしまう。

気がつけばフライボックスにミッジを補充し、車のタイヤをスタッドレスに交換し、奥さんと子供に一緒に行かないか聞いているのだが、結局は「お父さん一人で行っていいよ」とやんわり断られたので独りで出かけることにした。

 

車のナビに吉田川のバロー前をセットして所要時間をみると6時間とでる。よく見ると岐阜県に入るあたりから一般道の案内だ。

雪のため各所で交通規制があるとのこと。

一瞬怯むがここまできたらもう気持ちがとまらない。

 

長野と岐阜の県境あたりで一般道に降りると辺りは一面銀世界。

途中、スタックしていた車の救助を試みるが、どうにもならずJAFを呼んだ。

この先の峠道に不安を覚えるが、同時にワクワクする様な不謹慎な感覚もあった。

子供のころ、台風がくるとワクワクしてたなあ。

 

やっとの思いで吉田川に着く。

解禁日の翌日だからだろうか、釣り人は案外少ない。

ということはライズしていないんだろうな、と思って川面を見ていると、なんと時折やっている。

 

急いで川岸に向かい水面に入る。やっぱり冷たい、寒い。

しかし、恐らくは数匹のシラメの群れがライズと共にゆっくりと近づいてくる。

久しぶりのドキドキ感と寒さが相まって手が震える。毛鉤が上手く結べない。

「8Xってこんなに細かったか」

 

極小の毛鉤をなんとか結んで、ラインをリールから引き出す。

もう少し、もう少しで私のところにライズが来る。

 

慎重にフライを送り込むこと数回、やっと出た。

水面下でキラキラとなった後、バシャバシャと音が立つ。

「あいつ釣れたな」という釣り人の視線が緊張感を倍増させる。

 

嬉しい。ありがとう。

 

全て放流魚だったが、群れが通り過ぎるまで6尾釣れた。

このシラメ達も海まで下るのだろうか。

 

過酷な生存競争に敗れたアマゴやヤマメが海に下り、サツキマスやサクラマスとなって故郷の川に帰ってくる。

そして、その川の上流でもう一度生存競争を繰り広げる。

ドラマの逆転劇の様でどうしても応援したくなる。

 

ダムや堰に阻まれて「下れるか」「上ってこられるか」といった問題もあるだろう。

長良川水系も昔は天然魚がたくさん釣れたと聞く。

その頃が羨ましい。

 

 

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「お先に失礼します。」
残業中の人達に目配せをして外に出た。そわそわと落ち着かない気分と、後ろめたい気持ちがあった。
「では、お気を付けて・・・」同じ部署の女性がそう言って微笑んでいた。彼女、もしかすると少しばかりの嫌味を込めて言ったのかもしれない。
そう勘ぐってしまうのは、明日、有給休暇を使って釣りに行くことがバレているからだった。休暇届けを提出した時なんかは、「釣り休みだな」と上司が笑っていた。

そう、明日は2月1日なのだ。

少しでも早く岐阜県に入って睡眠時間を確保したかった。飛び乗るように地下鉄を乗り継ぎ急いで家に帰ると、奥さんが道中で食べるようにと、おにぎりを手渡してくれた。なんて有り難い。流石、解っていらっしゃる。
僕は、おにぎりと荷物を車に積み込んで「じゃ、行ってきます」と車から手を振った。

長野県の駒ヶ根ICを越えた辺りから雪がちらつき始めた。いい感じだ。小雪が舞う日はシラメが良く釣れると聞いたことがある。
雪を見て興奮したせいか、睡魔に襲われることもなく無事に高速道路を走りきることが出来た。そして、長良川から程近い道の駅に車を止めて仮眠をとった。

少し寒くて目が覚めた。窓には朝日が差し込んでいて、雪が止んだことが分かった。時計は8時を回っていた。慌てて釣りの格好に着替えて釣り場を見回るが、何処も釣り人が並んでいた。完全に出遅れてしまった。
仕方なく支流へ向かった。長良川本流から近いトロ場を車から眺めると、釣り人が3人見えた。2人は餌釣りで1人がフライだった。暫く見ているとフライマンが魚を掛けたのが見えた。餌釣り師の竿も曲った。僕は、たまらなくなって、竿を手に取りゆっくりと近づいた。

暫くの間3人の後ろで入れる場所を伺っていると、またフライマンの竿が曲った。魚を網で掬い上げ、中をチラっと覗くと、魚を水に浸けながら此方に歩いてきた。
「シラメですか?」と声を掛けた。
「いやあ、アマゴだね。小さかったから期待したけど・・・」と答えが返ってきた。
笑顔で答えてくれた男性は僕と同年代に見えた。シラメではないことを残念がってはいるが、解禁日に釣れた嬉しさが僕にも充分に伝わってきた。
暫く話をすると、この男性も昨夜関東から来ていたことが分かった。そして、釣れた毛鉤の大きさや種類などを丁寧に教えてくれた上に、少し場所を移動するからと言って、この場所を譲ってくれた。
なんと心の広い方だろう。いや、もしかしたら僕があまりにも恨めしそうに眺めていたから居た堪れなくなってしまったのだろうか。もしそうだったら申し訳ないことをしたと思ったが、ここで遠慮してしまうと竿を振らずに帰ることになりそうなので、有り難くご厚意を頂くことにした。

冷たい澄んだ川の流れに足を入れた。腿まで浸かると、寒さが背筋を伝って全身を覆った。
川の音は穏やかで、対岸で囀る小鳥の声がはっきりと聴きとれる。
雪化粧した山に目を向けると、青空にゆっくりと雲が流れて、最高の景色だった。



辺りを見回すと、羽化したばかりの小さな川虫が飛んでいる。そして、それにつられた魚達が水面に波紋を広げていた。
賑やかになった水面に毛鉤を乗せた。ゆっくりと下流に流れていく。決定的瞬間を見逃すまいと息を呑んで毛鉤を見つめた。
直ぐに釣れるだろうと思っていたが、なかなか釣れない。毛鉤を一回り小さなものに変えてみたが、それでも釣れないので釣り糸も極細のものに変えてみた。すると、やっと魚が毛鉤を咥えてくれた。
今にも切れそうな糸の先に繋がっている魚を大事に大事に引き寄せる。水面でバシャバシャと転がりながら手元に寄ってきた魚を網で掬った。成魚放流のアマゴだったが綺麗な肌をしていた。



写真を撮っているとさっきの男性が戻ってきた。
他の場所はあまり釣れていないと言っていた。僕の隣で竿を出していいかと聞いてきたので、勿論承諾した。もともとこの場所はこの男性が譲ってくれた場所なのだから。
二人並んで竿を振った。暫くの間、僕等は至福の時間を過ごした。

昼を過ぎて、トロ場全体に陽が当たるようになると川はめっきり静かになった。岸に腰を下ろして2時間程川を眺めたが状況は好転しなかった。
「私は切り上げます。」と男性が言った。
僕も帰ると答えると、男性は、かじかんだ手に息を吐きながら「帰りは長いな」と言って笑った。僕も笑って頷いた。

川から上がり、車へ向かう途中、橋の上から川を覗いた。少し上流で波紋が見えた気がした。
もう一度やったら行ってみようか、そう思いながら眺めていると僕の後ろに軽トラックが止まった。窓から顔と片腕を出して「どや、釣れたか?」と年配の男性が聞いてきた。何匹か釣れたと答えると、「ハクシマか?」と聞いてきた。ハクシマとはシラメの別称だと聞いたことがあったので、今日釣れたのは白く(銀化では)ない放流したアマゴだったと答えた。
男性は、天然のシラメがいた昔のことを話してくれた。少し残念そうな目をしていたが「いっぱい釣ってな」と笑顔を残して走り去って行った。
傾いた陽を浴びて光る水面に、またポツンと波紋が広がった。



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4月の上旬。

 

東京でも桜が咲き始めた。

 

桜の花を見かけるこの時期になると、浜通りのとある里川が気になってくる。
昨年初めて訪れた川なのだが、その時の景色が今でも記憶に残っている。川の両岸に植えられた桜が満開に咲き誇り、まるで桜の花のトンネルの中で釣りをしているような、なんとも幸せな時間だった。

 

そんなことを思い出していたら、無性に行きたくなってしまって、早速来てしまった。
しかし、気が早かったらしく、桜はまだ咲いていなかった。

 

少し残念な気持ちになったが、枝を見上げると膨らみ始めた蕾が沢山付いていた。

 

あと一、二週間かな・・・一人呟いた。

 

釣り支度をして、桜の木の合間から川に下り立った。濁りの無い透き通った水が足元をさらさらと流れ、ひんやりと冷たかった。

 




竿を振り始めたが水面は静かだった。

 

暫く釣りあがっていると、耳の後ろで何かがうごめいている気がした。慌てて手をやると、手のひらにカワゲラが乗っていた。

 

「よし、いいぞ」と思った。

 

すると、程なく目の前の瀬で水面に飛沫が上がった。魚がカワゲラなどの川虫を食っているのだ。

 

ゆっくりとラインを引き出し、水飛沫の場所めがけて毛鉤を放り込んだ。
すると水飛沫と共に毛鉤が消えた。

くいっと竿先を上げると水中で魚が暴れ始めて、その動きが手首に伝わってくる。引き寄せると、きらきらと水面で踊るヤマメが見えた。水に濡らした手ですくい上げた。小ぶりだがよく太った綺麗なヤマメだった。

 

その後も、平瀬がある度に美しいヤマメが飛び出してくれた。

 

 

 

遠くに小さな堰堤が見えた。

 

その堰堤の横にある桜の木に、誰か男が登っているのが見えた。

 

「はて、何をしているのだろう、どう見ても大人だよな・・・」そう思いながら釣り上がって行くと、今度はその男が鋸で枝を伐っているのが見えた。私は少し怒りを覚えた。これから咲く桜の枝を切るとはなんて酷い事を、と思ったのだ。

 

堰堤を越えようと岸に上がったついでに、その男に声を掛けた。

 

「あのー、何をしてらっしゃるんですか?」少し無愛想な言い方になっていた。すると、その男はこっちに振り向いて「おー、釣れてたな」と言って木から降り始めた。どうやら、枝を伐りながら私の釣りを見ていたらしい。

 

木に登っていたことから若い男かと勝手に思っていたが、降りてきた男は私の父ほどの年輩の方だった。

 

「おめえさん、ここにはよく来るのか?」と聞いてきた。「ええ、去年からですけど、ここの桜の下で釣りをするのが好きなんです」と答えると、その男性は「そうかそうか」と嬉しそうに笑った。

 

そして、桜の木を見渡しながらこう言った。

 

「そろそろ、増えすぎた枝を伐ってやんねえと、花が咲く前に葉っぱが出てきちまうからよ、間引いてたんだ」

 

はっとした。ついさっき、無愛想な言い方をしてしまった自分が恥ずかしくなった。

 

「いつもこのくらいの時期に剪定しているんですか?」と聞くと、男性は「そうだ」と頷いた。そして、ゆっくりとした口調で話し始めた。

 

「ここの桜はソメイヨシノでよ、これは小まめに手入れしてやんねえと綺麗に花が付かねえんだ。昔、俺の爺さん達が隣町から貰ってきて増やしたんだけどな。知ってっか?これは種からじゃ育てられねえって・・・」

 

「えっ」といって言葉が詰まった。なんのことか分からなかった。

 

聞けば、日本のソメイヨシノは殆どが同じ木から増やしたものだという。つまりクローンだというのだ。そして自分の花の花粉や、遺伝的に近親種の桜の花粉では受粉しない、したとしてもその種は発芽しないという。更に、受粉して発芽したとしても、それは遠い種類の桜との間に出来た混合種であるからソメイヨシノとは別物であり、花の付け方も違うのだという。

 

身近に感じていた桜だったが、このことは全く知らなかった。

 


その後も、ひとしきり、この年輩の男性と話をした。

 

男性のお子さんは、私と同じく東京に移り住んでいて滅多に帰ってこないらしい。しかし、この桜の咲く時期には、ひょっこり帰ってくることがあるという。それも楽しみで手入れをしていると言っていた。

 

 

 

男性に、色々教えてもらったお礼を言って釣りに戻った。

 

男性は暫くこっちを見ているようだった。

 

堰堤の上で大きなヤマメが掛かった。すると、後ろで「おーまた釣れたか!」と声がした。さっきの男性が土手を駆け下りてきた。



 

「いいヤマメだなあ・・・」と無精髭を撫でながら男性が言った。

 

毛鉤を外し、流れに戻してやると、「なんでえ、逃がしちまうのか?」と言った。

 

「ええ、いっぱい増えてほしいですから」と私は答えた。
男性は「いい心掛けだ」と言っていた。

 

「もう少ししたら、桜も満開になるからよ、また来いよ」といって男性は土手を上がって行った。

私は、「ええ、必ず見に来ます」と声を上げていた。



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2010年、渓が開いた。
2月の終わり、信州の里川へ向かった。



降り続いていた雨は上がり、空は薄っすらと明るくなっていた。
枯葦の川縁に立ち、逸る気持ちのなか小さな毛鉤を結んだ。
水面に目をやると、ユスリカやクロカワゲラが流れている。
これは期待が持てる。
そう思ったとたん、小さな堰堤の下で水面がバシャッと弾けた。
「やってる」・・・思わず声が出た。

ゆっくりと近づき、毛鉤を振り込んだ。
少し深みのある、緩やかな流れに乗って、毛鉤はふわふわと浮かんでいた。
バシャッ、魚が出た。
クイっと竿先を煽ると、水の中でキラキラと光が見えた。
「よし、シーズン一号」・・・嬉しさのあまり、糸を手繰り寄せながら声を上げていた。
足元に寄ってきたのは、小さな小さな可愛いヤマメだった。



久しぶりのヤマメを ひとしきり眺めた後、「ありがとう」と言いながら流れに返した。
その後も、この堰堤の上と下で数匹のヤマメが釣れた。



川に春が来たことを実感した。嬉しかった。
空を見上げると、雲の隙間から日の光が差し込んでいた。
今シーズンはどんな旅が待っているだろう。
今からわくわくする。



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9月の最週末、遠野を目指して東北道を走っていた。

もうすぐ宮城と岩手の県境になる。
私は音楽を止めて、FM岩手に周波数を合わせた。
これは岩手に行くときの、お決まりのことだった。
作家でいらっしゃる、村田久さんのラジオを聞きたかったのだ。

妻が「何時やってるんだろうね?」と言った。
私の目的が分かっているようだった。
ラジオの番組名は「野遊び倶楽部 イーハトーヴ」」だ。
私達は、放送日時を知らなかった。
インターネットやらで調べれば直ぐに分かることなのに、ついつい忘れてしまっていて、結局、いつも見当違いの時間にFM岩手を聞いていた。

深夜、東北道の「東和IC」に着いた。
今日は、近くの道の駅で車中泊だ。
「今日も聞けなかったね」眠りに着く前に妻が言った。
「明日は御本人に会えるんだから」、二人で笑った。
早く会いたいね、緊張するね、などと言いながら眠りについた。
そう、今回の旅の目的は、村田久さんに会うことだった。

前回の遠野の旅で「民宿わらべ」の御主人から、次の週末は村田さんが来ると聞いた。
毎年、9月の終わりに恒例の催しがあるという。
それは、故「芦澤一洋」さんと親しかった人達が、村田さんと共に「民宿わらべ」に集まる会だ。
今回は、その会に参加したくて遠野へ来たという訳だ。
しかし、困ったことがあった。
私達は、芦澤さんとの面識が無かった。
なのに、いきなり参加して大丈夫だろうか。
少し心配だった。

うとうとと、眠りかけながら昔のことを思い出していた。
亡き父が末期癌で入院していたころ、芦澤さんについて少しばかり話をしたことがあった。
山梨の病院で外出することも出来なかった父。
さぞかし暇だろうと思い、私は、見舞いに行く度に、父の大好きだった釣りの話をした。
今日は小菅村へ行って良型のヤマメが釣れたとか、妻も釣りを始めたとか、私が身振り手振りで話をすると、父は魚の写真を見ながら嬉しそうに聞いていた。



ある時「フライフィッシングって言えば、鰍沢出身の有名なやつが居たなあ」と父が言った。
その時は、誰のことなのか分からなかったが、後で芦澤さんのことだと分かった。
父は、鰍沢町の隣の増穂町出身だった。
もしかすると、芦沢さんと父は、富士川辺りですれ違っていたかもしれない・・・
そんなことを思っていた。

朝、目が覚めると外は気持ちのいい青空だった。
遠野の里川で妻と竿を振った。
秋色のヤマメや逞しいイワナが何匹か釣れた。
久しぶりの妻との釣りは、やっぱり楽しかった。

夕方、「民宿わらべ」へ入った。
弐代目御主人が出迎えてくれた。
「もう、ぼちぼち始まってますよ」と、村田さん達が到着していることを教えてくれた。
急いで荷物を部屋へ運んだ。
程なく「村田さんが呼んでますよ」と、わらべの御主人が教えてくれた。
「えっ」動揺した。
いざとなると不安と緊張が増してきた。
おどおどと、村田さん達が集まっている炉辺へ向かった。

村田さんとお仲間の方々が見えた。
村田さんの前にはマイクが置かれていた。
「ささ、ご夫婦、こちらへ座って座って」村田さんのほうから話し掛けてくれた。
どぎまぎしながら「始めまして」と挨拶をした。
すると、こちらの緊張が伝わったのか「今日は、どうぞ安心して参加してください。皆、気さくな人達ですから」と言ってくれた。
そして、今から「野遊び倶楽部 イーハトーヴ」の収録をすると言った。
私達も特別ゲストという形で出演してほしいと依頼された。
正直、面食らった。
村田さんに会えただけでも嬉しいというのに・・・
「え、え、どうしよう」少しの間、妻と顔を見合わせていたが、有難く御好意をいただく事にした。

村田さんを囲む、十人程の輪に混ざって座った。
収録が始まった。
「今回は、遠野にあります、民宿わらべ からお送りしたいと思います。毎年、9月の終わりに、亡くなった芦澤一洋さんを偲んで、親しかった人達が此処に集まって楽しく飲んで、食べて、という会を行っているのですが・・・」村田さんの語りが続いた。
どきどきしながらも、わくわくしてきた。
「今日は、東京からお越しの御夫婦が、特別ゲストとして参加していただいております」と、私達の紹介が始まった。
マイクがまわってきた。
自己紹介をどうぞと言われた。
緊張しながら、私と妻が簡単に自己紹介を済ませた。
不意に「奥さん、釣りはどうですか?旦那さんは、優しく教えてくれますか?」村田さんが妻に聞いた。
妻は「最初のうちは優しく教えてくれるんですが、主人がなかなか釣れない時や、私が思うように投げられてなかったりすると、たまにイライラされちゃうんです。だから、主人に、早めに大物が釣れてほしいと思いながらやってます」と、笑みを浮かべながら答えた。
ワッと、その場に笑いが起こった。
楽しい収録が続いた。

収録後、食事会が行われた。
民宿わらべの、いつもの美味しい料理がテーブルに並んだ。
集まった方からの差し入れで、三陸産の新鮮なマグロの刺身もあった。
食卓は豪華だった。

皆で食事をしながら、村田さんの話に耳を傾けた。
聞きたかった。これを待っていた。
「昔、芦澤君と出会った頃、僕は手拭で頬被りをして釣りをしてたんだよ。すると「村田さん、その格好はないよ」って彼が言うんだよ。僕は、何も服装なんか格好つけなくたって、て思ってたんだ」
芦澤さんとの思い出話が始まった。
私は、食べるのを忘れて聞いていた。
「でも、彼と釣りをしていくうちに、彼の魚に対する愛情とか、自然に対する尊敬の念だとかが、僕にだんだんと伝わってきて、あ、正装して釣りをするってことは、魚に対する、釣りという行為をするときのエチケットなんだ!って思うようになったんだよ。」
皆、うんうんと、何度も頷きながら聞いていた。
「そんな風に感じ始めた頃、彼が帽子をくれたんだ・・・」
ハッとした。
いつも村田さんが被っている帽子、雑誌のエッセイと一緒に描かれている帽子は、芦澤さんからの贈り物だったんだ。

楽しい宴会は、深夜まで続いた。
ゆったりとした時間の流れと共に、村田さんの楽しい話が続いた。


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