• 2015.09.25 Friday
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「お先に失礼します。」
残業中の人達に目配せをして外に出た。そわそわと落ち着かない気分と、後ろめたい気持ちがあった。
「では、お気を付けて・・・」同じ部署の女性がそう言って微笑んでいた。彼女、もしかすると少しばかりの嫌味を込めて言ったのかもしれない。
そう勘ぐってしまうのは、明日、有給休暇を使って釣りに行くことがバレているからだった。休暇届けを提出した時なんかは、「釣り休みだな」と上司が笑っていた。

そう、明日は2月1日なのだ。

少しでも早く岐阜県に入って睡眠時間を確保したかった。飛び乗るように地下鉄を乗り継ぎ急いで家に帰ると、奥さんが道中で食べるようにと、おにぎりを手渡してくれた。なんて有り難い。流石、解っていらっしゃる。
僕は、おにぎりと荷物を車に積み込んで「じゃ、行ってきます」と車から手を振った。

長野県の駒ヶ根ICを越えた辺りから雪がちらつき始めた。いい感じだ。小雪が舞う日はシラメが良く釣れると聞いたことがある。
雪を見て興奮したせいか、睡魔に襲われることもなく無事に高速道路を走りきることが出来た。そして、長良川から程近い道の駅に車を止めて仮眠をとった。

少し寒くて目が覚めた。窓には朝日が差し込んでいて、雪が止んだことが分かった。時計は8時を回っていた。慌てて釣りの格好に着替えて釣り場を見回るが、何処も釣り人が並んでいた。完全に出遅れてしまった。
仕方なく支流へ向かった。長良川本流から近いトロ場を車から眺めると、釣り人が3人見えた。2人は餌釣りで1人がフライだった。暫く見ているとフライマンが魚を掛けたのが見えた。餌釣り師の竿も曲った。僕は、たまらなくなって、竿を手に取りゆっくりと近づいた。

暫くの間3人の後ろで入れる場所を伺っていると、またフライマンの竿が曲った。魚を網で掬い上げ、中をチラっと覗くと、魚を水に浸けながら此方に歩いてきた。
「シラメですか?」と声を掛けた。
「いやあ、アマゴだね。小さかったから期待したけど・・・」と答えが返ってきた。
笑顔で答えてくれた男性は僕と同年代に見えた。シラメではないことを残念がってはいるが、解禁日に釣れた嬉しさが僕にも充分に伝わってきた。
暫く話をすると、この男性も昨夜関東から来ていたことが分かった。そして、釣れた毛鉤の大きさや種類などを丁寧に教えてくれた上に、少し場所を移動するからと言って、この場所を譲ってくれた。
なんと心の広い方だろう。いや、もしかしたら僕があまりにも恨めしそうに眺めていたから居た堪れなくなってしまったのだろうか。もしそうだったら申し訳ないことをしたと思ったが、ここで遠慮してしまうと竿を振らずに帰ることになりそうなので、有り難くご厚意を頂くことにした。

冷たい澄んだ川の流れに足を入れた。腿まで浸かると、寒さが背筋を伝って全身を覆った。
川の音は穏やかで、対岸で囀る小鳥の声がはっきりと聴きとれる。
雪化粧した山に目を向けると、青空にゆっくりと雲が流れて、最高の景色だった。



辺りを見回すと、羽化したばかりの小さな川虫が飛んでいる。そして、それにつられた魚達が水面に波紋を広げていた。
賑やかになった水面に毛鉤を乗せた。ゆっくりと下流に流れていく。決定的瞬間を見逃すまいと息を呑んで毛鉤を見つめた。
直ぐに釣れるだろうと思っていたが、なかなか釣れない。毛鉤を一回り小さなものに変えてみたが、それでも釣れないので釣り糸も極細のものに変えてみた。すると、やっと魚が毛鉤を咥えてくれた。
今にも切れそうな糸の先に繋がっている魚を大事に大事に引き寄せる。水面でバシャバシャと転がりながら手元に寄ってきた魚を網で掬った。成魚放流のアマゴだったが綺麗な肌をしていた。



写真を撮っているとさっきの男性が戻ってきた。
他の場所はあまり釣れていないと言っていた。僕の隣で竿を出していいかと聞いてきたので、勿論承諾した。もともとこの場所はこの男性が譲ってくれた場所なのだから。
二人並んで竿を振った。暫くの間、僕等は至福の時間を過ごした。

昼を過ぎて、トロ場全体に陽が当たるようになると川はめっきり静かになった。岸に腰を下ろして2時間程川を眺めたが状況は好転しなかった。
「私は切り上げます。」と男性が言った。
僕も帰ると答えると、男性は、かじかんだ手に息を吐きながら「帰りは長いな」と言って笑った。僕も笑って頷いた。

川から上がり、車へ向かう途中、橋の上から川を覗いた。少し上流で波紋が見えた気がした。
もう一度やったら行ってみようか、そう思いながら眺めていると僕の後ろに軽トラックが止まった。窓から顔と片腕を出して「どや、釣れたか?」と年配の男性が聞いてきた。何匹か釣れたと答えると、「ハクシマか?」と聞いてきた。ハクシマとはシラメの別称だと聞いたことがあったので、今日釣れたのは白く(銀化では)ない放流したアマゴだったと答えた。
男性は、天然のシラメがいた昔のことを話してくれた。少し残念そうな目をしていたが「いっぱい釣ってな」と笑顔を残して走り去って行った。
傾いた陽を浴びて光る水面に、またポツンと波紋が広がった。



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